U=Uに関するQ&A

U=Uに関するQ&A

セックスの相手が男性でも女性でもU=Uと言えるのでしょうか
セックスの相手が男性でも女性でも、膣性交(あるいはfrontal sex)でもアナル性交でも口腔性交でも、タチでもウケでも、継続的な治療を受け検出限界値未満が持続していれば、セックスを通じた感染リスクはありません。
コンドームはもはや必要ないのでしょうか?
効果的な治療を継続的に受けウイルス量が検出限界値未満を維持出来ていれば、HIVの性感染リスクはゼロになりますが、HIV以外の他の性感染症(ウイルス性肝炎や梅毒、クラミジア、淋病など)や予期しない妊娠は防ぐことはできません。したがってコンドームの使用は他の性感染症の予防や予期しない妊娠を避けるため、すなわちあなたとあなたのパートナーの「性の健康」にとって、大変重要で有用な方法です。U=Uはコンドーム使用推奨と相反する概念では決してありません。むしろ相補的な関係だと考えられます。誰でもひとり一人が、それぞれがおかれている状況や環境に応じて、自身とパートナーの「性の健康」を守る方法を自らが選択し実践する、その選択肢の一つとしてU=Uが果たすべき役割があるのではないかと考えています。
性感染症があるとHIV感染リスクが上がると聞いてますが。
当初Swiss Statementでは「いかなる性感染症にも罹患していない」ことがU=Uの必要条件の一つでしたが、その後発表されたOpposites Attract研究およびPARTNER研究では、HIV陽性者の約30%ならびにHIV陰性者の約25%が何らかの性感染症に罹っていたものの、パートナーへのHIV感染は一例も観察されませんでした。したがって性感染症があっても、処方どおりに抗HIV薬を内服し検出限界値未満が6か月以上持続しているHIV陽性者からは、性行為を通じて相手にHIVを感染させるリスクはない、と現在では考えられています。しかし定期的に医療機関での検査を実施し、性感染症の早期診断を受け適切な治療を実施することは、あなたとパートナーの「性の健康」にとって大変重要です。
陽性パートナーがU=Uであれば、陰性パートナーがPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis 暴露前予防)を行う必要はなくなったのでしょうか。
Opposites Attract研究参加者の39%、PARTNER2研究参加者の37%のMSMは、試験期間中にメインパートナー以外の相手との間にコンドームを使わないアナルセックスがあったと回答しています。このようにメインパートナー以外とセックスのある人や、HIV陽性パートナーが抗ウイルス薬を開始して間もない人、あるいは何らかの理由があって薬を内服できない陽性者の陰性パートナーの方にとっては、PrEPは大変有効な予防手段です。
一時的にHIVが検出されること( “Blip”)があってもU=Uはあてはまりますか?
処方どおり抗ウイルス薬を服用して検出限界値未満が6か月以上持続しているHIV陽性者であっても、ときどき低いレベル(20~1000 copies/mL)で一過性に血中からHIVが検出されることがあります。これを ”Blip” と呼んでいます。多くの場合は数日後には再び検出限界値未満に戻ることが知られており、Blipがあっても相手へのHIV感染性に変化はないといわれています。
注射による薬物使用(IDU)でもU=Uはあてはまりますか?
現時点で、薬物使用等で注射器具等を共用した際のHIV感染リスクの減少程度に関する明らかなデータは出ていません。つまりあくまでU=Uは「セックスを通じて」の性感染のみに限定されています。したがって注射薬物使用の際には清潔な注射器を用い、注射器等の器具の共用をしないなど、引き続き気を付ける必要があります。清潔な注射器を使うことは皮膚の感染症や細菌性静脈炎、さらにC型肝炎などの予防にも大変有用です。
母乳育児でもU=Uはあてはまりますか?
血液中のウイルス量が検出限界値未満になると母乳を介した母子感染のリスクも大きく減少することは知られていますが、残念ながら現時点では感染リスクがゼロになるということを示す明確なエビデンスは得られていません。したがって現時点では母乳育児ではなく人工乳育児のほうが安全であると考えられており、わが国におけるHIV感染妊娠に関する診療ガイドライン8)でも人工乳育児が勧められています。

参考文献

  1. 「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」(第2版)(2021年3月)
    令和2年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「HIV感染者の妊娠・出産・予後に関する疫学的・コホート的調査研究と情報の普及啓発法の開発ならびに診療体制の整備と均てん化に関する研究」班. 分担研究「HIV 感染妊娠に関する診療ガイドラインとHIV 母子感染予防対策マニュアルの改訂」班(研究代表者 : 喜多恒和, 研究分担者 : 山田里佳)

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