U=Uとは
U=Uの画期的なところは?
U=UはHIVの捉え方を大きく変えることになります
HIV感染症への取り組みでは、感染した陽性者が安定した療養生活を送ることができるようにすることと、これ以上感染が広がらないようにすること、この両方を適切に確保することが必要です。そのためには、感染の可能性のある行為と可能性のない行為を明確に区別することがとても重要になります。感染の可能性のある行為に対してはもちろん対策が必要です。しかし、感染の可能性がないのに無用に恐れてしまうと陽性者の生活がおびやかされますし、感染がわかった後の生活をおそれてHIV検査を受けづらくさせてしまい、かえって感染を広げてしまう要因にもなりえます。
このとても重要な感染可能性の有無の区別は、これまで「性行為を含まない日常生活:感染しない」と「性行為:感染しうる」の間に引かれていました。もちろん、性行為と言っても、コンドームを使用するなどセーファー・セックスを適切に実施していれば感染の可能性は極めて低いとされてきました。
しかし、U=Uが伝えることは、コンドームの使用の有無に関わらずいかなる「性行為」でもU=Uの状態であればHIV感染はおきない、ということです。人が生きていく中で、性行為は特別なものではなく、日常生活に含まれるものと思います。まさに、U=Uは、HIVに感染しても陽性者はHIVに感染していない人と同じように日常生活で他の人に感染させることはない、ということを明確に伝えるメッセージなのです。
U=Uは陽性者の生活の質QOLの向上につながります
U=Uのメッセージはいわば、社会生活において陽性者は、性行為を含めて感染していない人と何ら変わることのない生活を送ることができる、ということを伝えるものです。このように、これまで感染予防のために「行ってはいけない」「気をつけなければならない」とされていた制限がなくなると、どれほど陽性者にとって生活が良くなるでしょう。精神的な負担や、その他の諸々の負担から解放されて、選択肢の幅が増えることになります。こうして、陽性者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上につながると考えます。
HIVに対する差別・偏見を解消することでHIVの広がり自体の抑制につながります
本来、HIVに対して感染の可能性の有無に関わらず、不当な差別や偏見は取り除かれるべきものです。HIV感染を理由に、就労など社会生活で不利益を受けることはあってはならないことです。抗HIV療法を開始していないU=Uの状態にない陽性者とU=Uの状態にある陽性者を区別するべきではなく、どちらも等しく安定した社会生活を送ることができるよう保障されるべきです。
ただし、U=Uのメッセージが広がることで現実的に陽性者の負担や制限が軽減されQOLの向上が見込めること、これらのことによりHIVに対するイメージが社会的に大きく改善される可能性はあると考えます。
このようにHIVのイメージが改善され、HIVに対する差別や偏見(スティグマとも言います)が解消されていくにつれて、よりHIV検査を受けるハードルも下がることが予想されます。
HIVの感染拡大を防止する戦略として、検査を受けることでより多くの人がHIVに感染していることを知り、感染がわかったより多くの人が治療を受け、治療を受けているより多くの人のウイルス量が抑制されるようになり感染力がなくなる、このような状態を目指すべきというものが世界的に採用されています(「HIVケアカスケード」「90=90=90」と言います)。U=Uが伝える科学的事実は、まさにこの予防戦略を後押しするものと言われています。U=UがHIVの広がり自体を抑制すると言われる理由です。