世界のU=U支持の動き
「コンセンサス声明」本文
ウイルス量が検出限界値未満であるHIVとともに生きる人(陽性者)からの
HIV性感染リスクについて
基本メッセージとコンセンサス声明*
日本語文書
U=U Japan Project翻訳作成 2018年11月22日
抗レトロウイルス薬による治療(Antiretroviral Therapy: ART)を受け、少なくとも6ヶ月間血中ウイルス量が検出限界値未満を維持した陽性者(person living with HIV)からのHIV感染リスクは、存在しないと考えうるまで無視することができるということが、今や科学的根拠に基づき確証されている。HIVは検出可能なウイルス量の場合でさえ常に感染するというわけではないが、HIV陽性者のウイルス量が検出限界値未満の場合は、陽性者自身の健康の保持と新しいHIV感染の予防の両方をもたらす。
しかしながら、陽性者、医療提供者そして潜在的にHIV感染のリスクにある人々の多くは、有効な治療がHIV感染をどの程度予防するのかということを認識していない。HIV感染リスクに関するメッセージの多くは、時代遅れとなった研究に基づいたものであり、関係する組織や資金の制約、そして性に対する否定的な態度、HIVに関連するスティグマや差別を永続させるような政策によって影響を受けている。
ウイルス量が検出限界値未満となった陽性者からのHIV感染リスクに関する以下のコンセンサス声明は、当該課題を検証する先導的な各研究の主任研究者によって支持されている。陽性者、そして陽性者の親密なパートナーと医療提供者が、ARTを有効なまま継続している人からのHIVの性感染リスクについて正確な情報を有することは重要なことである。
同時に、多くの陽性者が、治療アクセスを制限する諸要因(例えば、不十分な保健医療システム、貧困、人種主義、拒絶、スティグマ、差別、そして犯罪化)、先行したART治療による耐性ウイルスの発生、あるいはART毒性のために、検出限界値未満の状態に達することができない状態にあるということを認識することも重要である。治療を受けないという選択をする人や治療を開始する準備が整っていないという人も存在する。
有効なARTは感染を予防するということを理解することで、HIVに関するスティグマを低減し、陽性者が有効な治療計画を開始し維持することを促進することができる。
【コンセンサス声明】
抗レトロウイルス薬による治療により血中のウイルス量が検出限界値未満を6カ月以上持続できているHIV陽性者は、性行為によって他の人にHIVが感染するリスクはない※。受ける治療薬の種類にもよるが、ウイルス量が検出限界値未満になるのにはおよそ6カ月かかる。HIVを持続的かつ確実に抑制するには、適切な治療薬と優れたアドヒアランスが必要である。HIVウイルス量が抑制されているかをモニターすることは、患者個人の健康にとっても、公衆衛生上の利益にとっても必要なことである。
注釈:HIVウイルス量が検出限界値未満の場合に予防できる感染はセックスによる性的パートナーに対するもののみである。コンドームは依然としてHIV感染症と同じく他の性感染症(STI)や妊娠を防ぐことができる。HIVの予防方法の選択は、その人の性行為や環境、そして性的パートナーとの関係性によって異なってくるだろう。例えば、HIVなど性感染症の予防のために一般にセーファーセックスが勧められる原則は変わらない。
※和訳者による注記
「基本メッセージとコンセンサス声明」日本語文書はU=U webに掲載されているものをU=U Japan Projectが和訳したものです。U=U web上の声明では、下線を引いているHIV感染リスクの表現について「無視できる (negligible)」という用語が使用されています。しかしながら、この声明は2016年7月21日に作成されたものであり、同じweb上の編集者注記(2018年1月10日付け)において、「無視できる (negligible)」という用語については、「性およびリプロダクティブ・ヘルスの決定において考慮すべきリスクが残存しているとして誤って解釈される可能性が高い」とみなし、リスクを伝える公衆衛生上のメッセージとして、「事実上リスクはない」、「感染されることはあり得ない」、「感染させない」といった用語の使用が推奨されています。よって、このコンセンサス声明日本語文書においては、「無視できる (negligible)」ではなく、「リスクはない」という編集者注記(2018年1月10日付け)に基づく改訂を行いました。
*コンセンサス声明原文(英語)は下記URL参照
https://preventionaccess.org/wp-content/uploads/2021/07/UU-Consensus-Statement.pdf